半はFXトレーダー不遇の時期といっていいだろう。昨年末に出そろった2021年の相場予想では、多くのアナリストが「1ドル=100円」などの円高相場を予想。にもかかわらず年始から円安ドル高が進展し、2月にはコロナショック直前の高値近辺まで回復したのだ。

アテが外れて損失を抱えたFXトレーダーは少なくない。そんななかで早くから円安相場を予想し、着実に利益を稼いできたのが某FXファンドのプロップディーラーも務める個人投資家のnori氏だ。プロの一面を持つ投資家の手法を探った。

nori(@nori_nosuke)
nori(@nori_nosuke)
大学進学時にもらった入学祝い100万円を元手に2003年から株式投資を開始。すぐに4分の1に減らしてしまったために、少額でもトレードしやすいFXに転向。大学卒業後にはサイバーエージェントFX(現YJFX)で3年間カバーディーラーを経験。そこで身につけた相場観を生かして2014年から専業トレーダーに。その実績が買われて、2020年からは某FXファンドの契約ディーラーとしても活躍。監修本に『結果を勝ち取る! 実戦のFXテクニカル』。

入学祝にもらった100万円が25万円に

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(画像=PIXTA)

――今ではFXファンドの契約ディーラーとしても活躍されていると聞いています。どのようないきさつでプロになったのでしょう?

順を追って話すと、私がFXを始めたのは2003年のこと。外為法改正で誰でも自由に為替取引ができるようになったのは1998年のことですから、かなり初期の頃にFXをはじめたクチです。当時は大学生になったばかり。叔母から入学祝いに100万円もらったので、それを投資で増やそうと最初は株式投資からスタートしました。

でも、2001年はITバブルが崩壊した年。買った株がどんどん値下がりしていって、100万円が25万円まで減ってしまった。信用取引でカラ売りすればよかったんでしょうが、当時はそんなこともわからない。売りから入れる金融商品はないかって探したところ、少額でもはじめられるFXのことを耳にして株から乗り換えたんです。

――そのころはまだレバレッジ400倍の時代ですよね。

そうなんですよ。今(最大レバレッジ25倍)と違って、少額で大きなポジションを持つことができました。それで一気に株の損失分を取り返そうと思ったのですが……。勝っては負けての繰り返しでジワジワとお金が減っていくので、FX資金を稼ぐためのバイトをやっていました。

その当時からガラケーでチャートを見れたり、指値注文を入れたりすることができたので、仕事中にガラケーを見ていても怒られないバイトを探したんです。それで見つけたのが、万引きGメンのアルバイト(苦笑)。ガラケーを見ながらお店のなかを巡回したほうがGメンだと気づかれにくいので。結局、3年やったバイト代のほとんどがFX資金に消えてしまいましたが。

――株のデビュー戦でもFXデューでも苦い思いをしたんですね。

でも、そのおかげで大学卒業後の就職先が決まったんです。就職活動シーズンにはFX会社に行こうと決めていました。なんとなく「為替のディーラーが一番格好いい!」と思っていたんです。

それで4つのFX会社を受けたら、学生時代のFX経験が珍しがられて3社から内定をもらえました。当時はFX黎明期だったので、大学生でFXをやっている人なんてほとんどいなかったんです。

FX会社に就職し、カバーディーラーを経験

――FX会社に就職されてどんなお仕事を? サイバーエージェントFX(現YJFX)に入って、3年間、カバーディーラーをやらせてもらいました。たとえば、投資家が「ドル/円〇枚買い」と注文を入れたら、FX会社は「ドル/円〇枚売り」のポジションを保有することになります。

でも、その後、ドル/円が値上がりしたらFX会社が損して投資家が利益を得ることになる。そういうリスクを被らないように、FX会社は投資家らの注文とまったく同じ注文を別のFX会社や銀行などに投げるんです。このリスクヘッジのための外に投げる注文をカバーディールというんです。

――投資家からの注文とまったく同じ注文を外に投げるだけですか?

そういうふうにいうと簡単な仕事と思われがちなんですけど、腕のいいカバーディーラーがいるほどFX会社は儲かる。なぜなら、カバーディーラーは相場を読みながら注文を投げるタイミングを探るからです。先ほどの例でいえば、ドル/円が値上がりすると思ったらドル/円売りのカバーディールを行うタイミングをズラして、値上がりを待つ。そうすれば、高値で売りポジションを持てて、値幅が稼げるんです。リスクヘッジのためのディールではありますが、FX会社の収益にも貢献する仕事なのです。

――それはいい修行になりそうですね。3年で辞めた理由は?

私は母子家庭で育ったのですが、働きはじめて3年経った頃に母が体を壊して入院することになったので、実家に帰って一緒にすごしたいなと思ったんです。なにしろ、カバーディーラーの仕事はハードです。FXは土日を除いて24時間取引可能ですから、カバーディーラー3交代制で常に顧客の注文状況を見ながら相場に張り付かなくてはなりません。

入社したての若いディーラーは体力があるので、自然と深夜の時間帯を任される。昼夜逆転生活が続いて、のんびり実家に帰れるタイミングがあまりなかったので、きっぱり辞めて帰ろうと思ったんです。

――3年間修行して、今なら母親の看病をしながら個人トレーダーとして稼げるという自身もあったのでしょうか?

少なからずありましたね。私が仕事を辞めた2014年にはトレード環境は以前よりも整っていたし、スプレッド(買値と売値の差)も劇的に縮まった。個人トレーダーもどんどん増えていた。3年間カバーディーラーとして相場に張り付いていたので、ある程度、相場の先行きが読めるようにもなっていました。もう、大学生時代のようにひたすら資産を減らし続けることはないだろうと。

いくつものテクニカル分析を併用する必要はない

――noriさんのトレード手法を教えてください。

使うのは移動平均線(SMA)とトレンドライン、チャネルラインぐらいです。SMAは20SMAと40SMA、75SMA、200SMAの4本を使うのですが、20と40に囲われたゾーンが色付けされる「MAリボン」というインジケーターを使っています。20と40がゴールデンクロスすると赤くなり、デッドクロスすると青くなる。ぱっと見で相場の状況を判断できるツールです。

学生時代はいろんなテクニカル指標を使いましたが、カバーディーラー時代の先輩がその4本の移動平均線だけを使っていたので、それをマネました。パラメーターの設定もそのまま。世の中にテクニカル分析は無数にありますが、どれも4本値(始値、終値、高値、安値)をいろんな計算式に当てはめて、見せ方を変えただけのもの。いくつものテクニカルを使う必要はないんだとカバーディーラー時代に学びました。

――その移動平均線を使ってどうやってトレードするんですか?

簡単にいうと、ローソクが移動平均線から上放れするタイミングで買い、下離れするタイミングで売る。ゴールデンクロスしたら買い、というのがセオリーかもしれませんが、私はクロスの仕方はあまり気にしません。それよりも移動平均線のかたちやローソクの並び方、移動平均線にローソクがタッチするときの角度が重要だと思っています。

理想的なのは20SMAと40SMAがスプーン型になって、ローソクがそのスプーンに救われるようにSMAから上放れして、かつ下向きのトレンドラインを上抜くような場面での買いエントリー。そういう場面では、綺麗に値幅が取れます。

1つのテクニカルを徹底的に使い続けることが重要

――とても感覚的ですね。

そうですね。トレードを教えてほしいという方に教えたことがあるのですが、なかなか伝わりませんでした(笑)。ただ、これはチャートを見続ければ、確実に身につくもの。個人的には、SMAを使わなくても相場観が身につけば勝てるようになると思います。でも、コロコロ使うテクニカルを変えてたらダメ。「今日は70でなく75SMAがハマるな」とか、使うSMAを変えていくトレーダーもいますが、それでは意味がないと思っています。

同じSMAを使い続けてこそ、値上がりするときや値下がりするときのSMAのかたちが頭に入ってくる。そのSMAとタッチするローソクの足のかたちで、次の相場が予想しやすくなる。1つのテクニカルを徹底的に使い続けてこそ、トレードは洗練されていくと考えています。

――そのお話と重複するかもしれませんが、初心者にアドバイスをするとしたら?

これと決めたら、その手法を突き詰めることですね。あとはトレードスタイルによりますが、リスクの大きなトレードはしない。私の場合はレバレッジを5倍に押さえてポジションを取るようにしています。一度エントリーしたら売り増し、買い増しはしません。移動平均線から上放れしたタイミングでの買いなら、移動平均線まで戻ってきたら損切りするだけなので、だいたい自動的に30pips離れた位置に損切り注文が入るように設定しています。

だから、専業になってから大負けした経験もない。FXファンドの契約ディーラーとしての成績は契約上いえませんが、個人のトレード用口座の残高は毎月100万円ぐらいは増えています。こんなシンプルなトレードでも勝ち続けることができるんです。