IPO、すなわち「新規公開株」は、上場直後に価格が大幅に上昇し、初値で売ることだけでも大きな利益を上げられるケースが多い傾向にあります。
せっかくのチャンスですから、なんとか当選確率を上げたいですよね。
こうした効率の良い取引が可能なIPO株の多くは、抽選によって分配されます。人気の銘柄であればあるほど抽選倍率は高くなります。
そこで、この記事では、IPOの抽選と当選確率を上げる方法について解説していきます。
IPOとは

IPO(Initial Public Offering)は、「新規公開株」あるいは「新規上場株式」と表現されます。具体的には、それまで未上場だった株式を証券取引所に上場し、誰もが売買ができるようにすることです。
IPO株投資とは、上場される株を買う権利を投資家が抽選で手に入れ、上場日の初値で売って利益を出す手法となります。
1-1.高リターンを期待できる株式投資
IPO株では、高い確率で大きい利益が得られると言われています。2019年に新規上場をした90社の公募価格と初値の関係を見てみましょう。
77社が値上がり、12社が値下がり、1社が同額という結果なので、約85%の株は投資家に利益をもたらしました。すべての銘柄の1単位(100株)を初値で売った利益の総計は、実に約800万円にのぼります。
1-2.IPO株購入の流れ
新規上場の株式は、その一部が証券会社を通じて投資家に配分されます。それを購入する手続きは、以下の表のような流れです。
【IPO新規公開までの流れ】

上場の承認から仮条件決定までは約2週間、ブックビルディングと呼ばれる需要申告期間が約1週間、その直後の公募価格決定から購入申込期限までが2~4日、そして上場までが3〜5日です。
承認から上場日までは、約1ヶ月かかります。
1-3.IPO株の購入可否は「抽選」で決まるケースが多い
IPO株は、抽選によって購入する権利が決まることが大半です。話題となっている企業のIPOなどは、倍率が非常に高くなります。あくまで目安ではあるものの、投資の初心者が主幹事ではない取り扱い証券会社から申し込んだと仮定すると、その当選確率は小型IPOで0.1〜0.5%、大型IPOで5〜10%くらいです。
IPO投資で当選確率を上げる6つの方法
前述のように、IPOの当選確率は非常に低いものですが、これから紹介する方法を試すことによって確率を引き上げることが可能です。
2-1.一般の人と資金力がある人ではアプローチが異なるのを理解する
証券会社によって事情は異なりますが、一般の人と資金力がある人では抽選に関するアプローチが異なる場合があるということを理解してく必要があります。
【楽天証券の場合】
こちらは完全平等抽選です。販売できる株数を申し込んだユーザーを対象に平等に抽選するむねがサイトで公表されています。
【SBI証券の場合】
こちらは、申し込み口数分の票数での抽選になります。ただし、この方式は全体の約70%で、残りは初心者や少額投資家を優遇するような独自の方式が採用されています。
2-2.複数の証券会社から抽選に参加する
当選確率を上げるために効果的なのは、複数の会社に申し込んでチャンスを増やすことです。抽選方法はさまざまですが、新たに口座を開設するのであれば、完全平等抽選の会社がおすすめです。
2-3.証券会社の窓口顧客になる
店舗型の証券会社では、窓口取引をしている顧客に営業担当者が優先して回す「裁量配分」という方法が採られているケースもあります。多くの場合、証券会社に割り当てられたうちの9割近くは裁量配分、残りの1割程度が抽選配分になるとされています。
ただし、営業担当者は上位顧客から優先して回すものと考えられます。同じ窓口顧客でもより資産がある顧客や取引実績が多い顧客、すすめられた商品を積極的に購入する顧客などが優先されることは認識しておきましょう。
2-4.主幹事の証券会社を見極める
多くの場合、IPO株は複数の証券会社に分配されます。その際、各社均等にIPO株が分配されるのではありません。主幹事となった会社には8割ほどが割り当てられ、残りの2割がほかの引受先に回ります。
もちろん、当選確率は申込数と分配数のバランスによって変わるので、必ずしも主幹事の会社がよいとは一概にはいえません。それでも、主幹事の会社の口座から申し込めば、確率が高くなる可能性があります。
複数口座を開設する場合には、主幹事となることが多い証券会社を選ぶことで有利になる可能性があります。
2-5.外れるほど当選確率が上がる証券会社もある
人気があるIPO株は、どうしても倍率が高くなって抽選に外れがちです。しかし、SBI証券では抽選に外れるとポイントが貯まるユニークなシステムを採用しており、次回の抽選において当選確率が上がる後押しになります。
具体的には、個人顧客への配分予定の3割に対して、抽選に外れた顧客のうちポイントが多い順に当選していくというシステムです。
つまり、抽選に外れてポイントが貯まると当選確率が上がるのです。抽選で外れた経験の多い人が優先して報われる制度といえるでしょう。
2-6.時間差を利用して申し込む
IPO株の抽選日は決まっていますが、申し込み後に抽選を行う会社もあります。このような場合、申し込み前に抽選を行う会社と比べて、販売日が数日遅れることがあるのです。
このタイプの会社は、「楽天証券」、「松井証券」、「auカブコム証券」、「GMOクリック証券」などになります。この時間差を利用して申し込み、抽選機会を増やして確率を上げましょう。
IPOに応募できる主な証券会社
IPO株の購入に応募できる主な証券会社を紹介します。
3-1.抽選への配分が多い会社が狙い目
たとえば、マネックス証券は抽選への配分が100%で、1人1票の完全平等抽選を行っています。IPO株の取り扱いがかなり多いことと資金力にも左右されない背景から、初心者が少額資金で当選を狙うのに適していると言えるでしょう。
IPO株を扱う主な会社の中から抽選への配分が多いところをピックアップし、過去3年間のIPO実績と抽選方法を口座開設数の多さでランク付けして表にしました。
証券口座名 | IPO実績 | IPO抽選方法 | ||
---|---|---|---|---|
2018年 | 2019年 | 2020年 | ||
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86社 | 84社 | 38社 | 完全抽選 70% チャレンジP 30% 店頭配分あり |
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66社 | 61社 | 22社 | 店頭90% ネット10% 完全平等抽選 (※) |
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50社 | 45社 | 24社 | 100%完全平等抽選 |
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47社 | 37社 | 16社 | 100%完全平等抽選 |
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11社 | 26社 | 13社 | 100%完全抽選 |
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23社 | 24社 | 9社 | システムでの平等抽選 |
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9社 | 21社 | 3社 | 70%完全抽選 |
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1社 | 0社 | 1社 | 100%完全平等抽選 |
※SMBC日興証券は、ネットで非当選の場合に最大5%を目処とした優遇抽選を適用
3-2.当選前に資金が必要な会社とそうでない会社がある
IPO株の抽選に応募するために、会社によっては必要とされる「前受金」というものがあります。具体的には、多くの会社ではあらかじめ100株分の資金を用意する必要があるのです。
前受金なしで応募できる会社から応募することで、コストを抑えて当選確率を上げることができます。前受金が不要な店舗型およびネット証券会社のIPO実績と抽選方法を表にしました。
証券口座名 |
IPO実績 2020年 |
抽選方法 |
---|---|---|
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41社 |
店頭90% ネット10% 完全抽選 |
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39社 |
100% 完全平等抽選 |
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5社 |
100% 完全平等抽選 |
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18社 |
70% 完全抽選 |
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7社 |
100% 完全平等抽選 |
IPO投資で抽選にはずれた場合の選択肢
IPO投資がうまくいかなかったときには、「セカンダリー投資」という選択肢があります。これは、新規上場後に初値が付いた銘柄を対象に、短期的な値上がりを狙って行われる投資です。
このセカンダリー投資について解説します。
4-1.セカンダリー投資のメリットは?
IPO株を購入する場合は、抽選に当たる必要があるため、誰もがその投資機会を得られるわけではありません。一方のセカンダリー投資は、上場して初値が付いた後に買うため万人にチャンスがあるというメリットがあります。
また、IPO投資では数十万円程度のまとまった資金を用意しなければなりません。セカンダリー投資の場合は信用取引もできるため、少額からでもできるというメリットがあるといえるでしょう。さらに、上場直後は値動きが激しくて上昇幅も大きくなる傾向があるので、高いリターンを得られる可能性もあります。
上場後の初値からの上昇が持続すると、2〜3倍になるというケースもあります。ただし、上昇が見込める銘柄を選ばなければならないので、銘柄の成長可能性を見抜くスキルも求められます。
4-2.セカンダリー投資を始めるには?
セカンダリー投資を始めるためには、まず証券会社に口座を開設しなければなりません。その後、投資する銘柄を決めます。そして証券口座に入金し、実際に購入することになります。
4-3.セカンダリー投資の注意点
セカンダリー投資には、取引のタイミングが難しいことやIPO投資よりもハイリスクになること、ロックアップなどの注意点があります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
【取引のタイミングが難しい】
セカンダリー投資は、購入のタイミングが難しいのため注意が必要です。百戦錬磨の投資家がひしめく中で、取引のタイミングを見極めるのは、非常に難しいことを理解しておきましょう。
【IPO投資よりリスクが高め】
IPO直後には、株価が激しく値動きする傾向にあります。そのため、株価が急激に上下する可能性もあります。急激な上昇傾向を確認して購入した直後でも、急落による損失を被ることも珍しくありません。
とりわけ、信用取引を利用するとリスクはさらに増大するため、投資額は抑えておくほうが無難です。
【ロックアップ解除に注意】
ロックアップとは、上場前であるIPO株の株主が、新規公開された後に一定期間は売却できない約束をしておく制度です。ベンチャーキャピタルが大株主になっているIPO株などに、ロックアップが設定されているケースが多く見られます。
条件はさまざまですが、「公募価格の2倍に到達するまで」、「上場から90日経過するまで」などが設定される場合があります。そして、このロックアップが解除されるやいなや、大株主による売却が始まる可能性があるのです。こうしたロックアップの解除によって、需給バランスが崩れる、株価は急落し、大きい損失を被るというリスクもあることには注意が必要です。
4-4.非上場企業の株式を購入する方法とは
IPO投資、セカンダリー投資に加えて、最近では個人でも未公開株を購入できる手段も出てきています。
【発行企業から直接購入】
未公開株の発行者との交渉により、直接購入する方法です。市場で流通していない未公開株は、その企業と交渉することで購入できます。
現実的には、企業を設立するときや増資を行うときなどに、企業の関係者や社員の親戚、友人、知人などから紹介される場合が一般的でしょう。ほかには、ベンチャーキャピタルが行うように、将来性の高い非上場企業に出資を提案することで未公開株を購入できる場合もあります。
【委託を受けた証券会社から購入】
未公開株の発行企業から委託を受けた証券会社から購入することもできます。未公開株を販売できるのは、第一種金融商品取引業者の資格を持つ特定の証券会社に限られ、通常の株式ほど機会は多くありません。
【クラウドファンディングで購入】
クラウドファンディングとは、広くWeb上で資金を集めて個人や事業者に投融資するサービスです。株式投資型のクラウドファンディングにおいて、未公開株に投資できるサービスもあります。
IPO投資に挑戦してみよう
IPO株の当選確率にフォーカスし、投資初心者のみなさんが取り組めそうな確率を上げる方法やセカンダリー投資などを紹介しました。
ここで紹介した方法をとれば、やみくもに申し込むよりも確実に確率がアップするでしょう。それでも購入できなかった場合は、リスクに重々配慮しつつセカンダリー投資にトライしてみるのもよいかもしれません。